BLと音楽が好き

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「ハンチバック」(市川沙央)読みました!

「ハンチバック」(市川沙央・著)

※ネタバレあり※

 

 

 

 

 

 

 

 

以前、文春さんが電書50%オフという出血大サービス・セールをやっておられたので、前から気になっていた「ハンチバック」を購入しました。

私はこの作品をひとりの女性が、性というファクターを通して世界と切り結ぶ冒険譚として読みました。

小説の語り手・釈華さんがともかく魅力的。釈華さんのユーモアと毒はクセになります。市川先生の言葉選びとか、物事に対する視点とか、作家としてのセンスに魅了されました。もっと市川先生が構築する言語世界に浸ってみたいです。

市川先生はエンタメの新人賞に応募されていたこともあったのだとか。自分語りに終わることがないサービス精神たっぷりの文章を読んで納得です。

波長が合う作者さん、今後もその考え方に触れたいと思える作者さんとの出会いは本当に貴重であります。次回作への期待が募りますね!

ラスト、聖書の引用あたりから不穏な空気が流れて、語り手が交代します。この語り手の正体は果たして誰なのか、釈華さんはどうなってしまったのか、謎が残ります。前半はみっちりと釈華さんの存在感が描かれていたのに、急にぽんと空白を差し出された感じ。

ネットで「ハンチバック 考察」で検索すると、結構いろんな説が出ていて、面白いです。いろいろな読み方ができる作品というのはネット時代に合っているのではないでしょうか。

短い作品ですが、濃密な読書体験ができた一冊です。