私の心は夏の庭に似ている。
放っておくと、昔あった嫌なことや苦手だった人の記憶が繁茂し、禍々しい花が姿を現すのだ。
毒の花は咲き始めるや否や、むっと胸が悪くなるような臭気を放ち、私を現在から過去へと連れ去ってしまう。
過去に拉致された私は、今まさに暴言を吐かれているかのような心地になり、苦痛を味わうのだった。
このトラウマの反すう癖をどうにかしたい……と悩んでいたところ、米津玄師さんの「さよーならまたいつか!」という曲に出会った。
朝ドラの主題歌であるこちらの曲。
曲調は基本的に明るくポップなのだが、時おり歌詞にギアが入り、インパクトのある作品になっている。
繰り返し聞いているうちに、「さよーならまたいつか!」という語感の軽やかさこそ、私に欠けているものだと悟った。
トラウマを反すうしてしまうメカニズムは専門家ではないのでよく分からない。でも、過去に固執していることが原因かなと思う。
トラウマが私を襲ってくるというよりも、私の方がトラウマに接近している。
私はもはやコントロールも修正もできない過去に拘泥して、ああすればよかった、こうすればよかったと考えてしまうのだ。
これからも付き合っていくであろうトラウマ。
記憶の完全消去といった真っ向勝負を挑むのではなく、「さよーならまたいつか!」と笑いながら手を振って、いなしていきたい。