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「パッキパキ北京」(綿矢りさ)感想 〜ネタバレあり〜

「パッキパキ北京」(綿矢りさ・著)

※以下、ネタバレあり※

 

 

 

 

〜この作品の魅力〜

  • 現代中国を活写しているところ
  • 語り手の菖蒲さんがパワフルで面白いところ

いやー。小説の面白さってキャラクターの魅力にかかっていますね!

本作の語り手、菖蒲さんは元銀座のホステス。20歳年上の旦那さんと結婚しています。

菖蒲さんは中国に赴任中の旦那さんと合流していわゆる駐在妻になるのですが、ともかくアクティブ。現地の人しか行かなそうな店に入る。買い物をしまくる。交流のあった中国人カップルの男の子にちょっとコナをかける。コロナをものともせず、やりたい放題です。

菖蒲さんはメソメソ、ジメジメした女性ではありません。

女友達と心理戦を繰り広げたりしますが、基本的に陽の人です。

ただラストあたりから菖蒲さんの土台が「パッキパキ」、つまりいつ崩れてもおかしくない脆いものになっていきます。

子どもを望む旦那さんに対して、身軽でいたいと願う菖蒲さん。大きくすれ違うふたりに未来はあるでしょうか?

また、菖蒲さんの愛犬ペイペイもいつかは儚くこの世を去ってしまいます。

菖蒲さんの未来には孤独が待っていると言えるでしょう。

でも、菖蒲さんなら北京だろうが東京だろうがどこでも生きていける。そんな気が致します。

 

本作から好きな一節を引用します。

 

「カワイイと相性が良いのはカヨワイとオサナイだけじゃない、カワイイはズウズウシイやケバケバシイとも平気でマッチングできる存在だと開き直れる度胸がこれからのヤマトナデシコには求められる、はず。(186/290ページより。電書で閲覧。デバイススマホ

 

これぞまさに、菖蒲節。語り手の菖蒲さんに魅了された一作でした。