※ネタバレあり※
以前から気になっていた作品です。新装版が出ると聞いて、手にとってみました。
そう。最初は「どれ、試しに読んでみるか」ぐらいの距離感だったんですよね、このお話と。それがだんだん読み始めるにつれ、物語に引き込まれていって。登場人物がまるで実際に会ったことがある人のように身近に感じられて。舞台になっている南方ラバウルに今まさに自分がいるような心地になったのですよ。
小説に没頭する。
ああ、なんて素晴らしい体験でしょう。
構成やストーリー、キャラクターももちろん素晴らしいのですが、尾上先生の書かれる文章がともかく私の心をヒットしまくりでした。硬すぎず柔らかすぎない文体。イメージ喚起力。リーダビリティ。美しさ。品格。どこを切り取っても理想的であります。
小説ってやっぱり言葉からできてるんですよね。どんなに魅力的な設定でも、肝心の文章に脚力がないと読者には伝わってこない。
BL好きな方はもちろん、「BL小説? あんまり馴染みがないなあ」と思っている方にも読んでみてほしいです。ラブシーンは少なめなので入っていきやすいかと。
いい小説は人生を豊かにしますね。私は、生きる……。